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MASH EVENT REPORT

MASH A&R 7回目のオーディション、総応募数約1000組の頂点に立ったのはユレニワ!

THE ORAL CIGARETTES、フレデリック、LAMP IN TERREN、パノラマパナマタウン、Saucy Dog、YAJICO GIRLが所属、「NEW ROCK, NEW STANDARD」を掲げてオーディションと育成、そしてデビューからの活動全般をサポートするプロジェクト「MASH A&R」。今年で7度目となるオーディションの決勝となる公開ライヴ審査「MASH FIGHT! Vol.7 FINAL MATCH」が、12月15日(土)に渋谷WWWにて行われた。

全国から約1000組もの応募が殺到する中、4月~9月の半年間にかけて毎月6~8組がマンスリーアーティストとして選出されてきた。その中から月ごとのリスナー投票で1位を獲得したアーティスト、さらにその他のマンスリーアーティスト全体から「MASH SELECT枠」として選ばれたアーティスト達、計12組によって先月11月4日(日)にオーディションの準決勝となるライヴ審査「MASH FIGHT! Vol.7 SEMI FINAL」がTSUTAYA O-nestにて行われ、見事その中を勝ち抜いたOLD BROWN OWL、CLOW、ゲシュタルト乙女、ユレニワ、シルエ、the paddlesの6組が、この日、ファイナリストとして、栄えあるグランプリを懸けて決勝の舞台に立つこととなったのだ。

このオーディションは一般のオーディエンスにも公開されている他、スペシャアプリ、LINE LIVEでも生配信が行われた。MASH A&Rの審査員票に加えて、会場一般審査員票、さらにネットを通したWEB審査員票のすべてを集計することで、最終的な審査結果となる。

持ち時間は1組20分。さあ、果たしてどのバンドが栄えあるグランプリを獲得することになるのだろうか。セミファイナルをさらに超える熱い闘いが繰り広げられた。

OLD BROWN OWL

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(Photo by 釘野 孝宏)

決勝のオープニングを飾るのは、岩崎弘(Vo&G)、衣袋航平(G)、三戸部光(B)という24歳のメンバーで構成され、東京を中心に活動中のOLD BROWN OWL。6月度のマンスリーアーティストに選出されたギターロックバンドだ。スーツアップした姿でステージに登り、「今日は1日いい時間にしましょう」と威勢のいい一言で幕を開けると、まずはエモーショナルな歌を中心に添えたロックンロール"一編のレゾンデートル"がスタート。ドラムはサポートメンバーによる演奏だが、ギターソロにもグルーヴにも抜群のキレが漲っていて、20分のステージを楽しもうという気概は十分だ。カポをはめ忘れることから緊張が伝わる瞬間はありつつも、キラキラと明るい照明の下で奏でられる"ゼフィランサス"は一番の盛り上がりをもたらした。キャッチーなメロディと思わず踊り出したくなる軽快なリズムに、会場からも手拍子が上がる。テンポアップする大サビが演出する多幸感は非常に美しく、この曲は間違いなくこれからも輝いていく曲になるだろう。ラストの"風の赴くままに"は、4曲の中でも特にヴォーカルの豊かな響きを感じ取ることができる楽曲で、ギターとベースがセッションのようにぶつかり合う力強い演奏もいい。ロックンロールやブルース、ガレージといったルーツを基調にしながら、型にハマることなくキャッチーで自由にオリジナリティへ昇華していける、バンドの幹をしっかりと感じさせるライヴだった。

CLOW

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(Photo by 釘野 孝宏)

2組目に登場したのは北海道札幌市出身のCLOW。弾き語りの女性シンガーソングライターであり、9月度のMASH SELECT枠としてオーディションを勝ち上がってきた。暗転したステージ上で静かにアコギを爪弾き始め、ライヴ開始。1曲目は"あま宿り"だ。<神様は十代で死んだ 今さら何に縋った>というサビの強烈な歌詞が耳に残るが、それを表現する彼女の歌、とりわけクライマックスに向かって湧き上がっていく、静かなる熱のこもった歌唱が素晴らしい。呟くように歌に入り、最後は血反吐を吐くような生々しさで歌い上げる。消え入るような儚さと、情念や執念といった想いがひとつの容器の中でごちゃごちゃに混ざり込んだようであり、それでいて凛としてステージに立つ姿に会場中が惹き込まれるように釘付けになっていた。続く"おめかし"は繊細なアルペジオとザクザク切り込む力強いストロークのコントラストが光る曲で、"電線と行く"ではループするコード上で艶やかながらひと際張りのある彼女の歌声を堪能することができる。目立ったMCを挟むこともなく、「今日はありがとうございました、CLOWでした」という一言からラストは"僕の歌"へ。暗がりの中で一筋の光を乞うように歌う姿は、もがき、迷いながらも、歌い手として立つ自分自身を鼓舞するようなに歌にも聴こえた。移り変わっていく心の機微を強烈な言葉に託しつつ、己の身体から絞り出せるだけの音域と声量で歌い上げ、ギター1本で出せるありったけのエモーションでもって演奏していく。歌はもちろん、ギターから出る一音一音の強弱も含めて、シンガーソングライターとして強烈な個性を残すパフォーマンスとなった。

ゲシュタルト乙女

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(Photo by 釘野 孝宏)

続いての登場は、2016年1月にヴォーカルのMikanを中心に結成された、台湾のロックバンド、ゲシュタルト乙女だ。9月度マンスリーアーティストであり、出場者の中で唯一国境を越えてやってきたバンドである。ドラムのChoが怪我のため、今回はサポートメンバーを迎えてのライヴとなったが、素晴らしい演奏を見せてくれた。「台湾から参りました、ゲシュタルト乙女です!」と一言、オルタナ感のある流麗なギターのメロディが印象的な"人生ゲーム"が爆音で鳴り響く。台湾のバンドでありながら歌詞は全編日本語、ブレイクダウンにグルーヴィな間奏が突然現れるという曲構成も面白く、場内からもハンドクラップが巻き起こる。「謝謝」というMikanの挨拶からの「朝6時に日本に着きました。こんなに寒くて台湾とは全然違っていますが、是非皆さんも一緒に楽しんでいきましょう」というMCでは、カタコトながらバンドが今日に懸ける意気込みを力強く語った。"生まれ変わったら""三色菫"と立て続けに演奏し、儚げで浮遊感のあるヴォーカル、繊細なギターメロディ、グルーヴィなベースと小刻みで変則的なドラムの絡み合いを惜しげなく披露。たとえばフィッシュマンズやthe band apartを想起するような、深い音楽的理解を感じさせるアレンジで、演奏からも一人ひとりのテクニックがよく伝わるが、楽曲全体としては非常にキャッチーに響いてくるのが面白い。オルタナやポストロックなどを昇華しつつ確かなポップネスを響かせることができるのがこのバンドの魅力だろう。ラストはラップ調の歌唱が新鮮な"Dreamaholic"で締め括られ、「ラララ」のシンガロングが会場を温かく包み込んだ。人柄の温かさもポテンシャルの高さも存分に見せ切ったライヴだった。

ユレニワ

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(Photo by 釘野 孝宏)

オーディションも折り返し地点となる4組目。登場したのは5月度MASH SELECT枠として選出されたユレニワである。2016年3月に結成された千葉県出身のロックバンドであり、 メンバーはシロナカムラ(Vo&G)、種谷佳輝(G&Cho)、宮下レジナルド(B&Cho)、RENJU(Dr&Cho)の4名だ。まず1曲目に披露されたのは"重罪"。ドラムを中心に一音一音がとてもダイナミックで、1曲目から全力で歌い上げているヴォーカルがとてもいい。大サビ前ですべての音が止まり、「予選で僕は勝ちにこだわらないつもりでステージに立ってたけど、絶対に勝ちたいです......!」と並々ならぬ意気込みを放ち、一気に会場の空気を掴み取ると、"Hello Glow"の軽快なテンポと見せ場満載のギターソロでさらに流れに乗る。「愛しくて命を捧げてもまだ足りない、この星すべてを捧げたいくらい愛しいバージンに捧げます」――3曲目はセミファイナルでも鮮烈な印象を残した"バージン輿論"。激情的な演奏と、マイクに倒れ込みそうなほど全身全霊で歌う中村の姿に、客席でも感情を開放して拳を高く上げる姿が目立つ。非常に衝動的でエネルギッシュなライヴ、けれども演奏にも楽曲にも、その背景に緻密なアプローチと幅広い音楽的素養に基づいた緻密なアプローチと、確かな音楽センスを感じさせるところが素晴らしい。セミファイナル時よりもバンドとしての演奏/表現の強度が明確に高くになっていた。全員が19歳という若さも驚きだが、ティーンエイジャー特有のどうにもならない衝動を迸らせながら、それをしっかり音楽へと昇華していけるテクニックの土台も素晴らしく、またしても強烈な余韻をステージに残すライヴとなった。

シルエ

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(Photo by 釘野 孝宏)

続いての登場はシルエ。新潟を中心に東京や名古屋などでもライヴを行っているバンドで、五十嵐一輝(Vo&G)、石口侑弥(G)、高橋圭太(B)、もみきしんのすけ(Dr)の4人からから成る。紹介ムービーからはバンドの仲睦まじさも感じられたが、ひとたび幕が開くと大爆音のギターロックが空気を切り裂いた。冒頭からベースの音が鳴らず、一旦演奏を止めて仕切り直すというハプニングもあったが、五十嵐の持ち前のポジティヴィティと、4人で力を合わせて乗り越えていこうというバンドの団結を見せることで、しっかり会場の空気を掴み直した。2曲目の"ハリ"はガレージ感漂うガシャッとした演奏と、五十嵐のハイトーン・ヴォーカルをしっかり堪能することができる楽曲だ。「歌いたことがたくさんあります。どっかにいる弱虫の救いになれたらいいなと思います。そのマイナスの美学をたくさん歌っていこうと思います」という中盤の印象的なMCには五十嵐が多くの人の前で歌う意味が色濃く滲み出ているようだったし、そこから背中をそっと押すような優しさと感情表現豊かな歌声が詰まった"Rainy day"が会場一帯に響き渡り、美しい景色を作り上げた。ラストナンバーは、今こうして肩を組んでステージに立ち、これからもバンドとして歩んでいく上での大事な指針になっていくであろう楽曲"ヒーロー"であった。瞬間瞬間で感じたことを楽曲に落とし込みながら、それだけでは収まらない熱量をしっかりライヴで発揮してきたバンドなのだろう。4人の生き様がしっかりと伝わってくる濃密な20分間だった。

the paddles

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(Photo by 釘野 孝宏)

いよいよオーディションアクトも最終6組目。2014年に大阪・四條畷高校の軽音楽部内で結成され、柄須賀皇司 (Vo&G)、松嶋航大(B)、加賀屋航平(Dr)から成るバンド、the paddlesの登場だ。8月度MASH SELECT枠での選出であり、本日の出演者の中で最もストレートという言葉が似合うギターロックバンドである。Weezer "Pink Triangle"のSEに乗って現れると、「僕らの武器はライヴなんで。誰にも投げられない豪速球投げて帰りたいと帰ります!」という紹介ムービーに込めた言葉通り、3ピース特有の衝動を迸らせたような"幸せ"を爆音で鳴らし、「ラララ」のシンガロングで早くも会場の空気をがっちり掴んだ。夏と青空が似合いそうな疾走感全開の"裸足の季節"、シンプルな言葉で構成された"花"を立て続けに聴いて感じたが、100%を超える力で思いっ切りストレートを投げ、お客さんもそこにありったけの想いをつぎ込んだそれぞれの感情を投げ返す――その全力のキャッチボールこそがthe paddlesのライヴなのだ。「ライヴだけで伝えられることがたくさんあると思ってます。一人ひとりの目を見て最後までしっかり歌い切りたいと思います!」という柄須賀の熱のこもったMCには、そんなバンドの本質がしっかり表れているように思う。「足が痛いです(笑)」というチャーミングな加賀屋のMCでひと笑いを取りつつ、ベースの力強いリフが印象的なラストの"ホーム"に至るまで、装飾なしで心臓の鼓動ひとつで勝負し切ったような、まさにストレート一択と言わんばかりのパフォーマンス。きっと醒めることない胸の奥の想いをどこまでも滾らせながら、まだまだ走り続けてくれるバンドなのだろう。

Guest Act:LAMP IN TERREN

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(Photo by 釘野 孝宏)

6組のオーディションアクトが終了し、最終審査を待つ間はゲストアクトのライヴが行われた。2013年の「MASH FIGHT! Vol.2」でのグランプリ・アーティスト、LAMP IN TERRENの登場である。松本大のポリープ切除手術のため活動を一旦休止していた彼らだが、8月の日比谷野音ライヴにて劇的な復活を遂げ、この日はMASHの先輩バンドとして出演。オーディションの緊張感もまだ残っていた中、「固くないですか、ライヴですよ!」という松本の一言と"地球儀"の演奏で、一気に会場はヒートアップしていく。そしてリリースされたばかりの新アルバム『The Nakde Blues』収録の"New Clothes"は、松本の歌声を中心に演奏が徐々に熱を帯びていき、空間に音が満ちていく様が非常に美しい1曲だ。曲がりくねった道を進み、共に苦難を乗り越えながらバンドとしての一体感を増した今の4人が、その輪を外へ外へと広げていき、音楽でお客さんを包み込んでいくかのような丁寧なパフォーマンスが光る。5年前のMASH FIGHT!がスタートになったからこそ、再び新たなスタートラインに立つ今のLAMP IN TERRENにとって、この舞台で披露するライヴはきっと特別なものなのだろう。「ゲストバンドと言えど、オーディションバンド達と変わらず、対バンをしにきました。最後まで楽しんで闘いましょう」というMCは後輩達へのエールであり、何より自分達自身を焚きつけるための言葉だったのだろう。「ここからが再出発。誠心誠意込めて皆さんの何かしらの一歩に繋がるように歌います」と、心の手綱を引き締め直すような言葉とともに、ラストを飾ったのは"BABY STEP"。グランプリ獲得後も自分自身を探しながら、道に迷いながら、それでもこれまで歩んできた確かな5年を信じてステージに立つ今のLAMP IN TERREN。会場の一人ひとりを、そして出演バンドの一人ひとりをじっと見つめるように松本は歌っていたが、"BABY STEP"は誰かの歩みをそっと手助けするだけじゃなく、これからのLAMP IN TERRENの支えにもなり得る大切な1曲となることだろう。音楽と向き合う誠実な姿勢を改めて感じさせてくれるライヴだった。

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(Photo by 釘野 孝宏)

そして、いよいよ最終審査の発表である。MCの落合健太郎がステージ上にMASH A&R審査員を呼び込み、参加者と出場バンドが固唾を飲んで見守る中、遂に「MASH FIGHT! Vol.7 FINAL MATCH」のグランプリが発表された。獲得したのは、「ユレニワ」!

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盛大な拍手に包まれる中、ユレニワの4人のメンバーがステージ上へ。MASH A&Rを代表して鹿野淳よりトロフィーが手渡され、「ヤバイ、最高だという言葉にならない気持ちと、この音楽の奥をもっと解析してみたいという気持ちの両方を強く感じさせてくれました。おめでとう!」という祝福の言葉がバンドに授けられた。バンドを代表して中村が挨拶を行ったが、「真面目なことしか言えないくらい本当に光栄です......!」という嬉しさや照れが入り混じったような一言が飛び出し、あの衝動的なパフォーマンスの裏で、真摯に音楽と向き合い、誠実に活動を重ねてきたことがこの結果に繋がったのだということをしっかり窺い知ることができた。

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(Photo by 釘野 孝宏)

なお、2019年8月14日(水)に東京・新木場STUDIO COASTにて開催される、MASH A&R主催のライヴイベント「MASHROOM 2019」にユレニワがオープニングアクトとして出演することが決定! 「8月14日まで成長し続けていって、(他のバンドに)匹敵できるようなバンドになりたいです」という一言に期待を込めて、来年の8月14日を楽しみに待つことにしよう。

MASH A&Rの次回のオーディション「MASH FIGHT! Vol.8」は2019年春からの募集を予定。まずはグランプリを獲得したユレニワに心からの祝福を送るととともに、見事に決勝に残った6アーティスト、そして応募をしたすべてのアーティストにとって、このオーディションが飛躍のきっかけとなることを、心から願いたい。

MASH A&Rオーディション「MASH FIGHT! Vol.7」12組による白熱のライヴ審査の一部始終&ファイナリスト発表!

THE ORAL CIGARETTES、フレデリック、LAMP IN TERREN、Saucy Dog、YAJICO GIRLが所属、「NEW ROCK, NEW STANDARD」を掲げてオーディション&育成、そしてデビューからの活動全般をサポートするプロジェクト「MASH A&R」。今年で7度目となるオーディションの準決勝となる公開ライヴ審査「MASH FIGHT! Vol.7 SEMI FINAL」が、11月4日(日)に渋谷 TSUTAYA O-nestにて行われた。
全国から多数の応募が殺到する中、4月~9月の半年間にかけて毎月6~8組のマンスリーアーティストを選出、その中から月ごとのリスナー投票で1位を獲得した6組(シルエ、PJJ、OLD BROWN OWL、ヒヨリノアメ、坂田穂乃花、ゲシュタルト乙女)に加え、その他のマンスリーアーティスト全体から「MASH SELECT枠」として選ばれた6組(ユレニワ、The Dragers、上野大樹、the paddles、CLOW、The Jest)の合計12組が、この日、ファイナル審査への切符をかけてO-nestに集結。持ち時間は1組につき15分。一般のオーディエンスも見守る中、それぞれが熱演を繰り広げた。

ヒヨリノアメ

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(Photo by toyo)

1組目に登場したのは、茨城県水戸市出身のピアノ・ギターロックバンド、ヒヨリノアメ。ザーザーと降る雨音のようなSEの中で静かにステージに上がった彼らは、まずピアノの流麗で美しいメロディに乗せて、静かに語りかけるような"room"を響き渡らせる。ドラムの小刻みなリズムの心地よさも相まって、独特な揺らぎが非常に心地よく、ラストの大サビではエモーショナルに、雨中を駆けるような疾走も見せていった。2曲目の"東京"は、バンドに懸けて東京で歌っていく覚悟が表れた、力強くもじんわりと染み渡るバラードナンバーだ。「コンテストだからじゃなくて、本当にMASH A&Rが好きでここに立っています。本当にこの音楽しかないんです。伝わるように最後歌います」と言って、ラストに掻き鳴らした曲は"Ai"。3曲の中で最もノイジーで衝動的なこの曲に乗せて、AKI(Vo&G)は<それでも愛を>と叫び、ありったけのエモーションを放出し切ったところでステージは暗転。静けさの中に燃える確かな情熱をしっかりと見せて、彼らはステージを去った。

坂田穂乃花

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(Photo by toyo)

2組目は、名古屋を拠点に活動するシンガーソングライター、坂田穂乃花。アコースティックギター1本を抱えて登場した彼女が最初に歌ったのは、21歳の等身大の自分自身と、歌い手として誰かの傍に寄り添う優しさを宿したような、ラヴソング"君のこと"。シンプルなコード進行で美しい歌声を聴かせたかと思えば、次の"歪愛"では冷ややかさや毒々しさを響かせ、その豹変ぶりはますますオーディエンスの心を掴んでいった。曲中の人物の心情を、まるで台詞を叫ぶかのように演じ切って歌い上げる様は、まるで女優だ。「バンドにも負けないように精一杯ライヴして帰りたいと思います」と言って、最後に歌ったのは"ウワサバナシ"。ライヴをひとつの物語として届けられるように心がけているという彼女は、3曲の短いステージの中でも人の心の表から裏まで見事に表現しながら、実に堂々としたパフォーマンスを見せていた。

OLD BROWN OWL

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(Photo by toyo)

続いて3組目、Lynyrd Skynyrdの"Sweet Home Alabama"に乗って登場したのは、スーツアップした姿が印象的な4人組バンド、OLD BROWN OWL。ロックンロール、カントリー、ブルースを取り込んだ新曲で幕を開けたかと思えば、2曲目"星と鏡"はややハスキーで色気のある歌声を前面に出し、ミドルテンポでエモーショナルなギターロックを聴かせ、自らの引き出しの幅を表現する姿勢を見せた彼ら。「あっという間ですね。一緒に楽しい時間を過ごしてくれてありがとうございました!」という岩崎弘(Vo&G)の挨拶代わりのMC後に鳴らしたラスト1曲は、"ゼフィランサス"。軽快なリズム隊とアッパーなギターが魅力的に鳴り響き、手拍子や「ヘイ!」という掛け声がよく似合う抜群のバンドポップナンバーであり、ロックバンドとしてルーツミュージックを解釈しながら現代のポップへと転換させる面白さを強く感じさせる1曲だった。眩しいほどハッピーなエネルギーを振りまいた彼らは、颯爽とステージを降りていった。

ゲシュタルト乙女

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(Photo by toyo)

続いては、出場者の中で唯一国境を越えてやってきた台湾のバンド、ゲシュタルト乙女が登場。東京でのライヴは今回が初めてということもあり、このバンド目当てに集まったオーディエンスも多くいた。独特の白昼夢感を浮かべる女性ヴォーカル、大きな体で流麗なカッティングや繊細なフレーズを弾きまくるギター、引き出し満載でテクニカルなドラム、そして重心低くうねるベースと、冒頭の"心狩り"から4人の存在感は抜群だ。オルタナティヴなインディロックから現代的なR&Bまで多様なエッセンスを感じさせつつ、確かなポップネスを放つ楽曲とセンスある演奏が光る。MCの日本語はややたどたどしいが、歌詞は流麗な日本語詞。MCを挟み、心地いいフロウが響くラップと<NA NA NA>のサビが魅力的な"DREAMAHOLIC"へ。夢の中に迷い込んだような幻想感を宿したとても素敵な楽曲だ。ラストは、ダイナミックなアンサンブルとコーラスワークが素晴らしい"生まれ変わったら"。大きな声援も上がったことからもわかる通り、確かな音楽センスと独特のオーラで惹き込んだ15分間だった。

CLOW

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(Photo by toyo)

5組目は札幌出身の女性シンガーソングライター、CLOW。ゆっくりと1弦1弦の音色を確かめるように、丁寧に爪弾かれるアコースティックギターの音色に乗せて1曲目"ヘアメイク"を始めると、浮遊感を宿しつつも確かなる深みと凄みを宿した歌声が会場の空気をガラリと変えた。暗がりの中にポツンとステージに立ち、その小さな体からとても大きな音楽を響かせる彼女の姿は、儚さや孤独を背負いながらも前に進んでいく、凛とした生き様を感じさせる。2曲目"普通"は、美しいアルペジオと共に歌われる「普通」という言葉の裏側にある様々な葛藤と、その上で自身を肯定しようとするかのような内容に心の奥が掴まれる。MCはシンプルに「今日はありがとうございました、CLOWでした」の一言のみ。<神様は十代で死んだ>という歌詞と、悲痛な叫びがあまりに鮮烈なラストナンバー"あま宿り"も印象的だったが、歌とギターという最小限で構成されていながらも豊かで深い音楽への理解を感じさせる楽曲群と、そこに全身全霊を込める彼女の姿は、会場の視線を間違いなく釘付けにしていた。

The Jest

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(Photo by toyo)

6組目は静岡出身、東京で活動する4人組バンドThe Jest。登場するやいなや、「俺は何かを伝えたくてバンドを選んだ!」という強い気持ちを届ける荒井直弥(Vo&G)のMCとともに、愚直で熱く、エモーショナルで力強いギターロック"19"を掻き鳴らす。抒情的なバラードパートから、汗と衝動が似合う疾走パートへ突き抜けていく"過去、今尚さす光"も泣きのメロディが光る1曲だ。全国ツアーのセミファイナルを終えた足でここに乗り込んできたという彼ら。MCでは荒井が「バンドってツアーしていると新しい出会いがあります。少しずつ膨らんでいくことに凄く幸せを感じてます。希望の歌を歌いたい、光溢れる歌を歌いたい、道標になる曲を歌いたい」と力強く語り、そして"最前線"に突入していったのだが、その瞬間の熱気は凄まじかった。音楽で必死に「大丈夫だ」と伝えたい、だからこそロックバンドをやるんだというエネルギーに満ちたライヴ。3曲を通して、確かにその爪痕をオーディエンスの心に残した。

PJJ

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(Photo by toyo)

オーディションも折り返し地点、小休憩を挟んで7組目に登場したのは、大阪を拠点に活動する5人組バンド、PJJ。「今日みたいに最高な日に歌う曲があります!」と言って始まった1曲目"ろくでもない夜に"は、スウィートなメロディにサックスの音色が絡み合い、モダンなソウルのテイストとブルースロックが融合した力のある1曲。さらに「PJJ!」のコールアンドレスポンスと手拍子で一気に場内を盛り上げると、畳みかけるようにブギーなファンクナンバー"want"へ。縦横無尽なグルーヴがうねり、サックスとギターが交差しながら鮮やかなメロディを奏でていく様には濃密な色香すら漂っている。ロック、ソウル、ファンク、レゲエ、ブルースなど、15分のパフォーマンスにも彼らの多様な音楽的参照点が伺えた。ラストは「友達のおかげで歌えるようになったこの1曲を」と言って、"眠らないで"へ。<最高の友よ>という歌詞が、まるで同じ空気を共有する一人ひとりに向けて捧げられた特別な言葉のように響く。ミラーボールが回る場内で、歌を前面に押し出したこの曲は、聴き終わった後の余韻まで楽しめる、彼らのライヴの締め括りに相応しい1曲であった。

the paddles

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(Photo by toyo)

続いては、大阪は寝屋川出身、高校の軽音部で結成されたという98年生まれの3人組バンド、the paddlesが登場。1曲目は跳ねるリズムと3ピースならではの豪快な演奏が心地よい"桜"。バンドで音楽を掻き鳴らす楽しさを体感しながら演奏している様子が伝わってくるような、エネルギッシュな楽曲だ。疾走感とキャッチーな歌を真ん中に据えたシンプルなギターロック"裸足の季節"も、その瑞々しい衝動とエネルギーの様が眩しい。「僕らは見ての通り真っすぐ直球しか投げれないんですけど、150km、160km、170㎞のどんどん速い球投げていこうと思うんで、どうか受け止めてください!」という柄須賀皇司(Vo&G)のMCは、愚直で不器用で、けれどそんなバンドにしか鳴らせない青春と衝動のロックがあるということを改めて思い知らせてくれる。光の粒がたっぷり詰まった3曲目"幸せ"は、真っ直ぐな眼差しで未来を見つめる彼らだからこその、希望に満ちた締め括りであった。

シルエ

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(Photo by toyo)

9組目は、新潟を拠点に活動し、東京や名古屋などでも積極的にライヴを行っている4人組バンド、シルエ。五十嵐一輝の高音まで伸びやかに響かせる歌声と、転調を織り交ぜたドラマティックな展開、完成度の高いテクニカルな演奏を楽しめる"ケセラセラ"からまずスタート。「僕達の魅力がたっぷりと味わえる3曲を用意しました」と意気込みをオーディエンスに伝えると、切ないバラード"Rainy day"へ。儚さが膨張してはち切れんばかりのサビの歌声の素晴らしさ、水流のようにしなやかなギターの音色など、1曲目とはまた違った実直に歌を伝え切るこのバンドの魅力を存分に感じることができる。ラストの"ヒーロー"はロックバンドらしい爆音と衝動が迸るエネルギッシュな1曲。繊細さもスキルも熱情もしっかりと表現し切った3曲で、豊かなヴァリエーションの奥にある彼らの音楽への想いを味わうことができた。

ユレニワ

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(Photo by toyo)

続いて登場したのは千葉県出身の4ピースバンド、ユレニワ。静かな弾き語りから入ったかと思えば、激情的で荒々しい演奏が炸裂するパートに瞬時に駆け上っていく"バージン輿論"でのっけから凄まじい。曲中でギターを投げ捨てた中村闘志(Vo&G)は客席に向かってこう叫んだ――「僕らの歌ってきたことを評価してもらうとか、そんなことのためにステージに上がってるんじゃない。僕らはラヴソングで世界を救う、ただそれだけなんです!」。ライヴに込めた彼らの決意と覚悟が滲み出たMCで一気にギアが上がり、場内をノイズの海に包み込んでから"PLAY"へグッと畳みかける。激しい衝動が迸る演奏はもちろん、各パートがオリジナリティ溢れるセンスのいいフレーズをしっかり織り込んでいるところも聴きどころだ。ラストナンバー"重罪"では、特にズッシリと重たい歌声と演奏がのしかかり、楽曲を破壊してまた何かを生み出すような、ライヴならではの熱気が迸った。「オーディションじゃねえ、ライヴなんだ」と言わんばかりの気迫が伝わるユレニワのパフォーマンスは、O-nestに強烈なインパクトを残した。

上野大樹

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(Photo by toyo)

「バンドが多いじゃないですか。僕もバンドやってるんですけど、みんなに少しでも弾き語りのよさが伝わればいいと思って。よろしくお願いします!」――そんな第一声で幕を開けた次なる挑戦者は、山口県出身のシンガーソングライター、上野大樹。彼の楽曲は、決して単純にハッピーだけでできているわけではないけど、アコースティックギターの一音一音、そして<この世で一番好きな歌がなくなってしまったなら>という歌詞からは、日常の中に寄り添う音楽という存在への想いが伝わってくる。「今日はちょっとおしゃれしてきました」など、MCの節々にはちょっぴりシャイでお茶目な人柄が表れている気がしたが、ステージ上で真っすぐ前を見て歌を奏でる彼は、人に対しても音楽に対しても、とても誠実な歌い手だ。<ずっとずっと君らしくあれよ><泣きたい時にそっと響け 僕からのファンファーレ>と歌うラストの"真夜中ファンファーレ"は、明日に向かって踏み出す一歩がほんの少しだけ億劫な時に、そっと寄り添えるような音楽でありたいという素直な想いが表れた楽曲だと感じた。透明感のみならず陽だまりのような暖かさを感じさせる歌声の良さも含め、雲の切れ間から差し込む陽光のように、ライヴハウスを明るく照らし出す15分間であった。

The Dragers

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最後に登場したのは、滋賀県出身・全員が98年生まれの4人組バンド、The Dragers。はっぴいえんど"暗闇坂むささび変化"のSEの下、Sonic YouthやNirvanaなど各々がお気に入りのバンTを着て飄々と現れたかと思えば、いきなり直球でダイナミックな爆音ロックンロール"瞬間と共に"が鳴り響く。続く、モッズサウンドや60年代オールドスクールに忠実なロックンロール"サラバ"は、まさに彼らのルーツと真骨頂が剥き出しになっている曲なのだろう。「この情熱が燃え尽きるまで、俺達まだまだ青き春のど真ん中!」と叫んで奏でられた3曲目"青き情熱"は、夢に向けて走り始めた自分達の衝動と情熱が、そのままの温度で詰め込まれたような爆音青春曲。自分達の信じるものだけを貫いて突っ切っている彼らのライヴは、まるで荒野をひた走るロードバイクのようであった。<誰も知らない俺達だけのメロディは 他の何にも邪魔はさせない>――ロックバンドを信じるものだけが叫べる穢れなき言葉に、胸が打ち震えたパフォーマンスだった。

後日行われたMASH A&R審査員による審査の結果、今回のSEMI FINALを勝ち抜いたのは、OLD BROWN OWL/CLOW/ゲシュタルト乙女/シルエ/the paddles/ユレニワの6組に決定。
上記の6組で12月15日(土)渋谷WWWにて、グランプリを賭けた最終ライヴ審査「MASH FIGHT! Vol.7 FINAL MATCH」が行われ、その渋谷WWWでのファイナルでは、かつて「MASH FIGHT! Vol.2」でグランプリを獲得したLAMP IN TERRENのスペシャルライヴも予定。未来のロックシーンの扉を開くべく、それぞれがその命運をかけて挑む12月15日の最終審査、その熱戦を是非現場で目撃して欲しい。

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